第2回
視力低下は学習や運動にも影響する?
子どもの「見えにくさ」を早く見つけたい理由

子どもの視力低下は、単に「遠くが見えにくい」「文字がぼやける」という問題だけではありません。
見えにくい状態のまま過ごすことで、学習への集中や運動、さらには精神的な負担につながる可能性もあります。
子どもの視力について長年研究を続けている桃山学院大学名誉教授・高橋ひとみ先生は、視力不良を早期に発見し、適切に対応することが大切な理由として、大きく3つの点を挙げています。

お聞きしたのは、

高橋 ひとみ 先生
桃山学院大学名誉教授。健康教育学を専門とし、長年にわたり近見視力をテーマとした研究に取り組む。
2015年には、幼児向けの視力検査キット「たべたのだあれ」を考案し、「第9回キッズデザイン賞」および「2015年経済産業大臣賞」を受賞。著書に『3歳からできる視力検査』『たべたのだれかな』『はっきりみえているかな?』など。

◆なぜ早期発見・適切な処置が重要なの?

ーー早期発見・早期治療が重要というのはなぜでしょうか?

<高橋先生>
大きく分けて3つの理由があります。1つ目に、目が見えにくいことによって子どもが知的関心を失ってしまう懸念があることです。遠見視力不良の場合、黒板の文字が見えにくくなり、近見視力不良の場合は教科書やタブレットの文字が見えにくくなります。

そのことによって似ている文字を見間違えたり、算数ではひっ算の桁数を見間違えたりしてしまうことがあります。そうすると周りの人から「努力が足りない」「集中力が足りない」などと誤解されてしまい、学習意欲の低下や知的関心を失ってしまう場合もあるのです。本当はそうではなく、単に視力の問題であるのに……。

また、脳波の実験によると、脳は「見えにくいもの」を見るとき、注意力を高めて情報処理を行います。すなわち、視力不良者は健常視力者よりも注意力を高める必要があるのです。そうすると注意力が続かなくなってしまい、学習能率が低下してしまうことも。生涯教育の時代において、義務教育の時代から知的関心を失うということは、子どもにとっても非常に問題です。

2つ目に、運動嫌いになる懸念。小学校入学前から小学校低学年を、プレ・ゴールデンエイジと呼び、この時期にいろいろな運動遊びを経験することにより運動神経のシナプスが作られ、その後の運動能力を伸ばします。

しかし、視力不良の子どもは近付いてくるボールが見えなかったり空間認知能力が低かったりするので、ボールのキャッチが苦手です。そうすると、上手にできなくて恥ずかしいなどの感情につながり、次第にボール遊びから遠ざかり、運動嫌いにもなりかねません。

また、小学校中学年から高学年はゴールデンエイジと呼ばれ、前時期に獲得した運動神経を伸ばします。この時期は見るだけで動作を覚えることができる「即座の習得」の時期といわれていますが、見る力のベースとなるのはもちろん視力です。

3つ目に、精神的な負担です。人間は近くのものを見るとき、ピントを合わせるために毛様体筋が緊張します。近見視力不良の場合は近くが見えにくいので、もっとしっかり見てピントを合わせようとして毛様体筋の緊張が大きくなります。この緊張が続くと目の疲れから脳疲労が起こり、集中力が低下し、ストレスの原因に。逆に、ストレスが目を疲れさせ、視力低下の原因になることも。まさに負のスパイラルですよね。

ストレスが慢性化すると、イライラしたり怒りっぽくなったりして、作業能率や学習能率が低下することもあります。ストレスは万病の元とも言われますが、目の病気も例外ではありません。

これら3つの懸念を回避するためにも、子どもの視力不良は早期に発見をして、適切な処置を受けてもらえるようにしたいですよね。

◆目の状態を正しく知れば、メガネを正しく選ぶことが出来る

高橋先生のインタビューと併せて、今回は眼科受診で正しい目の状態を知り、オグラ眼鏡店のこどもメガネブランド「アンファン」で最適なメガネ選び体験をした古澤さん親子に密着しました。

【まとめ】
子どもの「見えにくさ」は、学習、運動、日常生活のさまざまな場面に影響する可能性があります。
大切なのは、できないことを本人の努力不足と決めつけず、「もしかすると見えにくいのかもしれない」という視点を持つことです。
次回は、学校の視力検査などで視力低下を指摘されたときに、なぜ眼科医療機関を受診することが重要なのか、また正しい目の状態を知ったうえでのメガネ選びについてご紹介します。

記事作成:2025年2月14日