第1回
子どもの「見えてる」は本当に大丈夫?
見逃しやすい視力低下のサイン

子どもの「見えてるから大丈夫」という言葉を、大人はどこまで信じていいのでしょうか?本を読むときに極端に目を近づけたり、目を細めて遠くを見たり——。そんな些細な仕草の中に、実は重要な視力低下のサインが隠されているかもしれません。今回は、「子どもの視力」の研究を40年以上続けている桃山学院大学名誉教授の高橋先生に、子どもの視力低下と学習能率の関連、見逃しやすい視力低下のサイン、早期発見の大切さについて詳しく解説していただきました。

高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)/桃山学院大学名誉教授。2007年度東京大学大学院教育学研究科私学研修員。2012年度金沢大学医薬保健研究域医学系私学研修員。専門は健康教育学分野で、長年近見視力をテーマにした研究に取り組む。2015年、『「たべたのだあれ」視力検査キット』(フレーベル館)を考案し「第9回キッズデザイン賞」および「2015年経済産業大臣賞」を受賞。主な著書には『3歳からできる視力検査』(自由企画社)『たべたのだれかな』(自由企画社)『はっきりみえているかな?』(金の星社)などがある。

取材に参加したKIDSNAアンバサダー

◆子どもの「見える」を鵜呑みにしてはダメ?

<高橋先生>
生まれたばかりの赤ちゃんはあまり目が見えていません。視力は成長とともについてきて、生後5日目頃に明るさが分かる程度になり、生後6カ月頃には眼前50cmにあるモノがわかるくらいになります。3歳頃になると視力1.0に達する子が半数以上、そして6歳頃までに視機能はほぼ完成し、ほとんどの子の視力が1.0以上になります。

このように視力は年齢とともに発達します。そのため、年齢によっては「はっきり見える」という感覚を経験していません。今の見え方が自分にとって普通だと思っているため、自ら「よく見えない」と気付いて訴えることは少ないのです。また、不同視(右目と左目の視力が違う状態)の場合は、よく見えるほうの目で補ってしまうため、周囲の人が視力低下に気が付きにくいことがあります。

これらのことから、子どもが「見えてる」という状態は、本当ははっきり見えていないかもしれないということがわかります。視力検査や屈折検査をしなければ、子どもの「見え方」を正確に把握することはできないのです。もし健診で視力低下が疑われたら、早めに眼科を受診してください。

◆6歳以降は近視に気を付ける。生活環境が原因?

ーー小学生以降の子どもの場合、視機能はほぼ完成しているとのことでしたが、視機能が完成したあとで視力が低下することもありますよね。視力低下の原因は何なんでしょうか? 遺伝の影響はあるのでしょうか?

<高橋先生>
小学生以降の子どもの場合、視力低下の原因で最も多いのは近視なので、近視が遺伝するかどうかをお話ししますね。近視の原因には、先天性の遺伝因子と後天性の環境因子があり、この組み合わせにより近視が発生します。

まず先天性について。疫学的研究によると、両親のどちらかが近視の場合、子どもが近視になる確率は約2倍。両親が共に近視の場合は、5~6倍の確率で子どもも近視になると言われています。しかし、近視は環境因子の影響が大きいので、気を付けて生活していれば両親が共に近視でも、子どもは近視を発症しない場合もあります。

後天性の環境因子による近視は、屈折性近視のケースが多いようです。人間の目は近くを見るときに毛様体が緊張して、水晶体を分厚くします。ゲームやタブレットなど手元を長時間見続けると毛様体筋の調節機能が低下し、水晶体が膨らんだ状態で固定化してしまいます。つまり、近くを見続けることが、屈折性近視につながる大きな要因のひとつなのです。

◆自宅でも簡単!子どもの視力低下サインを見抜く方法

<高橋先生>
実際に、子どもたちの視力低下は問題となっていて、視力1.0未満の割合は、幼稚園生が23%、小学生が38%、中学生は61%、高校生は68%です(※)。

※文部科学省の学校保健統計調査報告書令和5年度の結果

ーーそんなに多いんですね。子どもは目が見えにくい状態に気が付かないとのことでしたが、親は子どもの視力低下を見抜いてあげられるのでしょうか?

<高橋先生>
はい。子どもは見えにくいことに気が付かなくても、なんとかもっと見やすくしようとするので、それが仕草や癖に表れます。子どものことを注意深く観察してみると、病気のサインがあるかもしれません。

視力低下の原因は、近視だけではなく、遠視・乱視などの屈折異常、斜視、白内障などの可能性も考えられます。目の発達段階にこれらの病気があると、視力発達の妨げにもつながり治療対象となります。以下の子どもの仕草で思い当たる項目がある時はもちろん、それ以外でも少しでも気になることがあれば、自己判断をしないで自己判断をしないで眼科医療機関を受診してください。

また、以下の行動も視力が低下しているサインかもしれません。

このようなサインがあれば、見えにくいのかなと疑ってみてほしいです。

【まとめ】
子どもは、自分の「見えにくさ」に気づいていないことがあります。
「見えていると言っているから大丈夫」と考えるのではなく、日頃の仕草や行動をよく観察し、見え方の変化に気づいてあげることが大切です。
気になるサインが見られた場合には、自己判断せず、早めに眼科医療機関を受診しましょう。

次回は、視力低下が学習や運動、日常生活にどのような影響を与える可能性があるのか、子どもの「見えにくさ」を早く見つけることが大切な理由をご紹介します。

次回は、学校の視力検査などで視力低下を指摘されたときに、なぜ眼科医療機関を受診することが重要なのか、また正しい目の状態を知ったうえでのメガネ選びについてご紹介します。

記事作成:2025年2月14日